トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

マザーを探して

「マザーを探して」10

僕はその目に吸い込まれそうになりながら、 「う、ううん」と小さく首を振りながら、目には涙が浮かんできた。 「嫌だ。こんなことしたくない」 と言ったのだ。 それを聞くと自分でもびっくりした。 僕がこんな事を言うなんて……。 学校で一番、馬鹿にされて…

「マザーを探して」9

僕たちは、真っ暗な中を進んで行った。 暗い草むらはまるで蛇のように、僕の体にまといつき、動きを止めようとする。 けれど、先を走るユーリが、勇者ペルセウスのように、 そのすべてを払いのけてくれた。 片手でランプを持ちながら、もう片方の手で、草を…

「マザーを探して」8

父さんの言う事には、なんでも、五十年前に、〝ジェニィ〟が滅亡したあと、 人類の存続のために、光の塔が作られたということ。 これは人類の秘密なので、悪い人達がマザーを悪用しないために、 各国の首脳たちが集まって会議をし、人目につかないように、こ…

「マザーを探して」7

僕たちは、暗闇の中、マザーのいる、光の塔を目指して駆けだした。 駆けだした―と言うのは、簡単だが、 塔までの道は辺り一面草原で、腰辺りまでの伸びた草の中を、突っ切っていかねばならず、 とても走りづらかった。 ユーリと僕は、その草を、掻き分け掻き…

「マザーを探して」6

それは大人たちとて同じ事。 もしかすると、隣のおじさんにも来ているのかもしれないのだ。 そう思うと、人が大勢集まる、今年の収穫祭には、あまり行きたくはないのだろう。 かと言って、行かなければ、「ああ、あいつに〝赤紙〟が来たんだな」と言われてし…

「マザーを探して」5

僕が近づいていくと、ユーリがランプを掲げた。 「遅いよ」とユーリは口をとがらせた。 僕の周りが一気に明るくなった。 「ごめん、ごめん。父さんがなかなか出掛けなくて」 と僕は謝った。 父のミカイルは、普段は物静かな農夫だった。 けれど、年に一度の…

「マザーを探して」4

ユーリは、すぐにクラスの人気者になった。 頭が良くて、運動神経も抜群で、非の打ち所がなかった。 皆はユーリと友達になりたがったが、どういう訳だか、 ユーリは、僕に話しかけるようになった。 それは僕が図書館から借りてきた本を読んでいた時のことだ…

「マザーを探して」3

四月になり、僕たちが四年生に上がった頃、燃えるような赤毛の男の子が転校してきた。 それがユーリだった。 ユーリは、マザーが保管されている〝光の塔〟の主任管理者として、赴任してきたお父さんと一緒に、この村へやってきた。その前はレニングラードに…

「マザーを探して」2

暗闇の中、僕はユーリとの待ち合わせ場所の小高い丘へ、ランプの灯りだけを頼りに進んで行った。 時折、絡まった長い草が足元をすくおうとする。 その度に僕はしっかり足を踏ん張った。 ここで倒れ訳にはいかないのだ。 丘のてっぺんに小さな光が見えた。 そ…

「マザーを探して」1

開け放した子供部屋の窓から、遠くの方で、 チカッ、チカッと二度明かりがともった。 「ユーリだ!」 僕はすぐにベッドから飛び起きて、こちらからも暗闇に向かって、 ランプを二度点滅させた。 そうしておいて、枕元に準備をしておいたカバンを肩からかける…