開け放した子供部屋の窓から、遠くの方で、
チカッ、チカッと二度明かりがともった。
「ユーリだ!」
僕はすぐにベッドから飛び起きて、こちらからも暗闇に向かって、
ランプを二度点滅させた。
そうしておいて、枕元に準備をしておいたカバンを肩からかけると、
子ども部屋から勢いよく出て行った。
いつもなら静かにしなければ父にこっぴどく叱られる階段も、
今夜はダダダと足音高く駆け下りていった。
だって、今夜は収穫祭なんだもん、と僕は口をとがらせた。
そう、今日は年に一度の収穫祭。
だから大人たちは全員、村の広場に出掛けているので、何の心配はなかった。
だって、朝からその用意で賑やかだったのだ。
その興奮した明るい男たちの声が、
村はずれのこの家まで届いていたくらいだ。
例年、収穫祭では、男たちがそれぞれ持ち寄った、手作りのご馳走が出て、
酒も出て、ポーカーをして……、
そして何より〝ジェニィ〟が来るのだ。
村の男たちが何よりも楽しみにしている〝ジェニィ〟。
彼女を見られる日だった。
だから男たちはこぞって広場に行っているのだろう。
行かないのは、〝マザー〟の管理をしている警備員だけだ。
きっと今夜当番になった男たちは、臍を咬んで悔しがっていることだろう。
けれどそれは同時に僕と親友のユーリにとってチャンスでもあったのだ。
村の男たちが〝ジェニィ〟に夢中になっている間、
僕たちは、手薄になったマザーのいる管理棟へ
こっそり忍び込もうとしていたのだ。
まだ誰も見た事のない〝マザー〟を―。
一目見ようとして―。
つづく