四月になり、僕たちが四年生に上がった頃、燃えるような赤毛の男の子が転校してきた。
それがユーリだった。
ユーリは、マザーが保管されている〝光の塔〟の主任管理者として、赴任してきたお父さんと一緒に、この村へやってきた。その前はレニングラードにいたそうだ。
大柄な少年で、流行の服に、ピカピカに光る靴を履き、僕たちのような田舎の小学生とは全く違っていた。
ユーリを初めて見た時、クラスの全員が固まってしまったほどだった。
お昼休みになると、早速、アレクセイがユーリに話しかけた。
彼は照れたように顔を赤くしながら、もぞもぞとズボンのポケットに手を突っ込んで、
「やるよ」
と小さくなった消しゴムを差し出した。
それは、昨日僕が彼に奪われたものだった。
ユーリは「ありがとう」と言って、チラリと見たが、
「大丈夫、僕は持っているから」と言って、筆箱の中から、真新しい消しゴムを取り出した。
アレクセイは飛んだ赤っ恥を掻いたという風に、頭を掻きながら、僕の方を睨んでいた。
僕は首をすくめた。
この分だと帰り道、またどんな無理難題を言われるか分からない。
僕は心中穏やかではなかった。
そして、案の定、放課後、僕はアレクセイから、
「チビた消しゴムしか持っていなかった罰」として、
しこたま殴られたのだけれど……。
つづく

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