ユーリは、すぐにクラスの人気者になった。
頭が良くて、運動神経も抜群で、非の打ち所がなかった。
皆はユーリと友達になりたがったが、どういう訳だか、
ユーリは、僕に話しかけるようになった。
それは僕が図書館から借りてきた本を読んでいた時のことだ。
ユーリは、本を読んでいる僕の机の前に頬杖をつくと、
「それ、面白い?」と聞いてきた。
僕はとっさに返事が出来なかった。
何せ、クラスの人気者、赤毛のユーリが目の前にいるんだもの。
「お、面白いよ」
僕は少々どもりながらそう言った。
「ふ~ん」そう言いながら、ユーリは本を反対側から覗き込んだ。
僕はドキドキした。
ユーリの真っ赤な髪が一筋、僕の額にかかった。
「何これ?鉄道の本?」
と聞くので
「そう。友達同士で鉄道に乗って、宇宙を旅するんだ」
いつの間にか、僕も気後れなく返事をしていた。
その頃、アレクセイにいじめられている僕になんて、
話しかけるクラスメートはいなかった。
僕のあだ名は〝弱虫キリル〟で、
皆から馬鹿にされていたのだ。
けれど、ユーリだけは、何も気にせず、
僕の中に飛び込んできてくれたのだ。
「面白そう!君が読んだら、つぎ貸してくれよ」
ユーリはそう言って目を輝かせた。
そうして、僕たちは本を通して、一気に仲良くなったのだ。
つづく