トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「マザーを探して」5

僕が近づいていくと、ユーリがランプを掲げた。

「遅いよ」とユーリは口をとがらせた。

僕の周りが一気に明るくなった。

 

「ごめん、ごめん。父さんがなかなか出掛けなくて」

と僕は謝った。

 

父のミカイルは、普段は物静かな農夫だった。

けれど、年に一度の収穫祭には、

明るい顔で、新品の服を着て出かけるのだ。

 

それはひとえに〝ジェニィ〟に会いたいがためだったが…。

けれど、今年はどういう訳か、広場へ行き渋っていた。

それはひとえに〝赤紙〟の事があったからかもしれなかったが―。

 

赤紙―。

それは僕たちの世界の希望の星。この世に〝ジェニィ〟を増やすための政府が立てた方策だった。

 

けれど、それは誰に来るのか分からない。

レニングラードにある中央政府の巨大なコンピューターに記録された、この国全員分のデータの中から、ランダムに選ばれるのだ。

 

それはある日突然やってくるらしい。

中央政府から派遣されたお役人が、家のドアをノックする。

そして赤い紙を差し出して、「おめでとうございます」と言うと、

家の人は、「ありがとうございます」と頭を下げなければならない。

そういう決まりになっているのだ。

 

何せ、赤紙を貰う人は、この世界を救う救世主なのだ。

だから、恭しくいただかなければならないと、担任のザハール先生はそう言った。

僕たちのクラスは騒然となった。

 

だって、その2、3日前から、どうやらこの村にも〝赤紙〟がやってきたようだと噂になっていたからだ。

 

みんな疑心暗鬼になっていたのだ。

〝誰が赤紙を貰ったのだろう〟と。

「お前か?」

「いや、お前か?」

と。

 

友達同士で集まると、すぐにその話になった。

 

そして、どういう訳か、あのいつも元気な暴れん坊のアレクセイが、静かなのだ。

それが僕には気になった。

 

もしかして…アレクセイに赤紙が―?

そんな想像もするのだった。

 

つづく

 

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ママチャリVS: トナリのサイコパス?あなたの隣のヤバい奴? (パモンブックス)