それは大人たちとて同じ事。
もしかすると、隣のおじさんにも来ているのかもしれないのだ。
そう思うと、人が大勢集まる、今年の収穫祭には、あまり行きたくはないのだろう。
かと言って、行かなければ、「ああ、あいつに〝赤紙〟が来たんだな」と言われてしまう。
だから、父さんは渋々といった様子で出かけたのだ。
父さんはどんな気持ちで今年の〝ジェニィ〟を見るのだろう。
もしかすると、この村からも来年は〝ジェニィ〟が出るかもしれないのに…。
そう思うと、とてもまともには見れないのかもしれない。
「お待たせ」と言いながら、僕はランプでユーリの顔を照らした。
燃えるような赤い髪は波打ち、透き通るような白い頬にまとわりついている。
そうして顔いっぱいのそばかすが浮き出ていた。
瞳は深淵なブルーだ。
その目を見ると、僕はいつも引き込まれそうになる。
彼の魂に魅了されてしまうというか…。
その美しさに、一瞬胸を打たれてしまうのだ。
「さあ、行こう!」
とユーリは僕を促した。
僕も「うん」と頷いた。
そうして、丘のはるか彼方に光る、ガラスで作られた美しいロケット型の塔を見た。
塔は暗闇の中に、今日も光輝いていた。
あそこに〝マザー〟が居るのだ。
人類のまだ誰も見たことがない、〝マザー〟が―。
月明かりの中、僕たちは、塔を目指して、丘を駆け下りて行った。
誰もが憧れる〝マザー〟を、一目見ようと―。
つづく