トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「マザーを探して」7

僕たちは、暗闇の中、マザーのいる、光の塔を目指して駆けだした。

 

駆けだした―と言うのは、簡単だが、

 

塔までの道は辺り一面草原で、腰辺りまでの伸びた草の中を、突っ切っていかねばならず、

とても走りづらかった。

 

ユーリと僕は、その草を、掻き分け掻き分け進んでゆき、ザザッ、ザザッという音だけが聞こえていた。

 

幸いにして、こんな状態でも、目標物が目立つので分かった。

 

光の塔は、遠くの方でも輝いて、まばゆいばかりだったからだ。

 

僕たちはただ、あのガラスの塔へ向かって走っていけばいいだけだった。

 

 

マザーのいる光の塔は、人類の秘密だ。

 

ロシアでも北極海に近いこの寂れたミンスク村で、世界でも重要な〝マザー〟が保管されているなんて、おそらくこの村の者以外では誰もしらないだろう。

 

否、この村の者だって、知っている人はそうそう居ないだろう。

僕がその秘密を知ったのは、ユーリと知り合ってからだ。

 

ユーリの父、セルゲイは、マザーの居る光の塔の責任者だった。

彼はマザーが快適に過ごせるように、その管理を任させているのだ。

 

光の塔に携わる者たちは、この村ではエリートだった。

村外から来るし、決して村の者とは交わろうとはしない。

それは彼らが秘密を抱えているからだった。

 

そして、短期のうちにその役目を終えて移動する者が多かったため、

結局は、気づけば、誰がいたのかも分からないくらいだった。

 

けれど、ユーリの父、セルゲイは違った。

彼はフレンドリーな性格で、積極的に村人たちに溶け込もうとした。

村に一軒だけあるバーにも立ち寄って、よく男たちと陽気に騒ぐ姿も

目撃されていたのだ。

 

しかし、それでも光の塔の話題になると口をつぐむのが常だったが。

だからこの村に住む僕らも、実は光の塔についてはよく知らないのだ。

 

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つづく