父さんの言う事には、なんでも、五十年前に、〝ジェニィ〟が滅亡したあと、
人類の存続のために、光の塔が作られたということ。
これは人類の秘密なので、悪い人達がマザーを悪用しないために、
各国の首脳たちが集まって会議をし、人目につかないように、こんな田舎をわざわざ選んで、作ったと言う事―だった。
だから、マザーの事を知られるのは、一番困る筈だった。
それはそうだろう。
だって、子供はどうやってできるの?
クラスでも一番チビで、クセのあるマルセルがそう理科の授業で聞いた時、
ザハール先生は目を白黒させて、答えられなかったんだもの。
理科の授業では、この世界は、〝オス〟と〝メス〟とに分かれていると
いうけれど、じゃあ僕たち人間は、どうやって生まれるの?
どこに〝メス〟がいるの?と。
思ったままが素直に口について出るマルセルの質問は、
僕たち全員が考えていたことだった。
クラスの全員が固唾を呑んで、先生を見つめたが、
先生は一つ大きな咳払いをしただけで、
「いずれは君たちにも分かる」と言っただけだった。
その後、大きなブーイングが起きた事は言うまでもないが、
僕はその喧噪の中、ユーリだけがひとり、真っ青な顔でいることに、
気がついたのだった。
つづく