トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「レンゲの花の咲く頃に」3

翔くんはこの地上に生れ落ちてからすぐに、この場所が不便なことに気がつきました。

 

まず体が重くて思うように動かせません。

 

今までは自由に大空を飛べていましたし、行きたいと願えばその場所に瞬時に行くことも出来ました。もちろん、雲の上にだって乗ることも出来たのです。

 

けれど、地上では翔くんが動かせるものは何一つなかったのです。せいぜいこの不便さに抗議の声をあげるくらいしかありませんでした。

 

それにお腹が空きました。

 

天上ではお腹が空くということがなかったので、初めて自分の体が鳴ったとき、翔くんはとても驚きました。

 

そしてその後は、うんと気持ちが悪くなり、イライラして、食べ物のことばかり考えるようになってしまったのです。

 

“お腹が空く”という感覚に陥ったとき、翔くんはパニック状態になりました。

このままだと一体どうなってしまうのかと思ってしまい、怖くなりました。

 

恐怖で泣き喚いていると、ママがすぐに飛んできて、おっぱいというものをくれました。

翔くんは、すぐにこのおっぱいというものが気に入りました。

 

そしてお腹がいっぱいになると、満足して眠るのでした。

眠りに落ちながら、翔くんは、この世界は怖くて、不安で、得体が知れないところだ……と思いました。

 

とても受け入れられそうにありませんでした。

けれど意識がなくなると、すぐに元の天上界へ戻ることができました。

 

そこでは翔くんは以前と同じように、羽のついた友達たちと遊びました。

 

友人たちはいつでも翔くんを待っていてくれて、一緒に飛び回りました。

そこは安心で平和でとても温かくて、気持ちの良い場所だったのです。

 

けれど夢はいつか醒めるものです。

 

目が覚めると翔くんは、世界が何一つ変わっていないことに、

いつもがっかりさせられるのでした。

 

もう一つ翔くんが不便だと感じていたのは、テレパシーが使えないことでした。

 

お空の上では口に出さなくても、みんなの考えていることがすぐに分かったし、また周りの人たちも翔くんの考えていることが分かっていました。

 

けれども、ここでは何一つ伝わらなかったのです。

 

だから翔くんは、いちいち泣き声を上げなければなりませんでした。

 

翔くんはだんだんとこの不自由な世界にうんざりしてきました。

 

そして、しょっちゅう泣き喚くようになっていきました。

 

神さま! うわーん、助けてーッ!

もう、ここはイヤだよー、早くボクをお空へ帰してよーッ!

 

連日連夜そう言って翔くんが喚き続けるので、ママもそしてパパと呼ばれる男の人も、すっかり参ってしまいました。

 

 

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つづく

 

 

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もしも好きな人との出会いの時に戻れたら…?

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