トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「レンゲの花の咲く頃に」4

「……くん、翔くん、何をそんなに泣いているんだい?」

 

ある日、いつものように翔くんが、精一杯大声を上げていると、そんな声が聞こえてきました。

 

驚いて見ると、天井近くに黄色くてふわふわとしたものが浮かんでいました。よく見ると、その物体には小さな手足がついていて、大きな黒い目玉がギョロリと、ふたつ付いているではありませんか。

 

「君はだれ?」翔くんが尋ねると、

「オイラかい? オイラ、ポヨポヨって言うんだ」

 

ふんわりとしたものが漂いながら言いました。そして、

 

「さあ、もう泣くのはおよし、オイラが遊んであげるからね」 

 

そう言うなりポヨポヨは、両手で思い切り、自分の頬っぺたを引き伸ばしました。その顔は目が

両端に寄り、ベローンと舌がでて、まったく間の抜けた顔に見えました。

 

思わずケラケラと笑った翔くんに、ポヨポヨは、

 

「ああ、良かった! 笑顔になって。これからはオイラがいつでも遊んであげるからね。もう泣かなくてもいいんだよ」

 

と嬉しそうに空中をクルクル回るのでした。

 

それからの翔くんはもうさみしくありませんでした。翔くんが悲しいとき、泣きたいときには、いつでもポヨポヨが現れてくれたからです。ポヨポヨは翔くんの気持ちが分かるのか、絶妙なタイミングで現れては、一緒に遊んでくれるのでした。

 

「この子ったら、いつも天井ばかり向いていて、気味悪いったらありゃしない。一体何を見ているのかしら」

 

ある日、ママがため息交じりに、そんなことを言うのが聞こえてきました。

 

「ああ、子どもにはね、見えないものが見えるって言うから、きっと翔くんにも遊んでもらっている何かがいるのかもよ」

 

ママの妹のヨウコおばさんが、茶目っ気たっぷりに返事をしていました。

 

「何かがねぇ」

 

困惑したようにママは翔くんを見つめるのでした。

 

「だって姉さん、なかなか赤ちゃんが出来なかった頃のことを考えてみてよ。今は幸せじゃないの。ねー、翔くん」

 

 おばさんは翔くんに相槌を求めました。

 

それを見ながら、ママは、

 

「そうね。出来なくても悩み、生まれてからもまた悩み……。親はこうやって、子どもに一生悩まされるのかもね」と自嘲気味に笑うのでした。

 

 いつまで経っても夜泣きが酷く、両親にさえなかなか笑顔を見せてくれない翔くんに、ママはほとほと参っているようでした。

 

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つづく

 

☆パモン堂の短篇小説はこちらから☆

「もう一度」人生をやりなおせたら…。

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