トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「ホラーな彼氏」2

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 私は近所の森に住む魔女の阿古屋さん家に向かった。

 阿古屋さんは三年前にこの森に住み着いた五十代の女性。

 真っ赤な髪に高い鷲鼻、突き出た頬骨、裾を引きずる黒いドレス・・・と、その異様な風貌に、近所の人たちは彼女のことを魔女だと噂した。

 

 実際、阿古屋さんが引っ越して来てから、野良犬や野良猫の姿が見えなくなり、森のあちらこちらに、小さな骨がちらばるようになったのだ。近所の人たちは気味悪がって、この森に近づかなくなってしまった。

 

 私は一人では恐いので、飼い犬のチロを連れて行った。チロは白と黒の長い毛のチワワ。あんまり頼もしい味方とは言えないけれど、それでもいないよりはましだ。

 チロは何が怖いのか、ウ〜ウ〜唸りながら、なかなか森の奥へ進もうとはしなかった。私は半ば強引にチロのリードを引きずって歩いていった。

 

 月明かりの中、ようやく森の奥に阿古屋さんの屋敷が浮かび上がって来た。

「こんばんは」恐る恐る声を掛けると、返事がなかった。

 私が扉を押すと、ギーッと軋む音がして、扉が開いた。中をのぞくと、真っ暗だった。

「・・・・・・」

 

 私は相変わらず、怯えてキュン、キュン鳴いているチロを引きずりながら、意を決して部屋の中へ入って行った。

 突然、目の前に何かがぶら下がった。

 

「—!」

 

 はっと息を呑んだ私がまじまじと見ると、それは、死んだカラスが天井から逆さにぶら下がったものだった!

 

「ぎゃーーーーーッ!!」

 

 私は大声で叫んでいた。その声を聞きつけたのか、奥からパタパタと足音がして、パッと灯りがついた。

 

「何、何?何なのよ〜?」

 

 それは真っ赤な髪の毛を振り乱した、寝ぼけ眼の阿古屋さんだった。どうやら寝ていたらしい。いつもの黒いドレスではなくて、緑の星がプリントされたパジャマを着ていた。案外かわいい趣味だった。

 

 その姿を見たとき、私は思わずこう叫んでいた。

 

「せ、先輩を、生き返らせたいんですッ!どうか助けて下さい!」

「はあ?」

 

 阿古屋さんは、何言ってんの?という顔で私を見た。

 

 

 つづく

 

 

 

 

嫁の家出 (実業之日本社文庫)

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