トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「ホラーな彼氏」3

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 それでも阿古屋さんは、大広間と見まごうばかりの居間で私の話しを聞いてくれた。

 

 突然死んだ早川先輩のこと。その先輩を生き返らせたいと思っていること。魔女である阿古屋さんなら、それが出来ると思っていること、などを私は一気に喋った。

 

 私の話しをじっと聞いていた阿古屋さんだったが、一通り聞くと、

 

「う〜・・・」と言ったっきり、頭を抱えた。

 

「あなた、本気で私が死人を生き返らせると思っているの?」

 

「はいっ!」私は満面の笑みで答えた。

 

「だって、阿古屋さんは魔女でしょ?みんなそう言っていますよ」

 

「う・・・」再び阿古屋さんは頭を抱えた。

 

「そんな噂が立っていたなんて・・・」

 

「で、でも、実際に帚に乗って空を飛んでいるのを見たという人もいますよ、肉屋の朝吉さんですけど・・・」

 

「朝吉・・・・・・」

 

 絶句して動かなくなってしまった阿古屋さんに、私は急いでソファから下りて、その足にしがみついた。

 

「お願い、阿古屋さん、先輩を生き返らせて・・・!先輩は私にとって、いいえ、この町にとって、とても大事な人なんです。だからお願い・・・」

 

 最後は涙声になってしまった。

 

 阿古屋さんは、早川先輩がどんなにステキな人か知らないのだ。将来の日本を背負って立つかも知れない人なのに・・・。なのに・・・こんなところで死なせる訳にはいかないのだ・・・。

 

 しばらく考えていた阿古屋さんだったが、決心したように顔を上げた。

 

「いいわ。それじゃあ、その何とか先輩とか言う人を助けてあげましょう」

 

「本当ですか!?」

 

 私は涙でぐしょぐしょになった顔を上げた。

 

「その代わり」

 

 阿古屋さんは遮った。

 

「私に何をくれるの?」

 

「何って—?」

 

「それだけの大仕事をするのよ、そんな私に、あなたは何をくれるの?」

 

「・・・・・・」

 

 う〜ん・・・私は考えた。てっとり早く現金かな?私は自分の預金通帳を思い浮かべた。お年玉をずっと貯め続けていたので、二十万くらいはあるはずだ。

 

「二十万くらいでいいですか?」

 

 おずおずと聞いてみた。

 

「はッ?」

 

 阿古屋さんは即座に撥ね除けた。

 

「そんなもんいるかいッ!?」

 

「す、すいません、それじゃあ・・・」

 

「そうねぇ、私が欲しいのは—」

 

 阿古屋さんの目が光った。

 

「あなたの若さね」

 

 

つづく

 

 

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