トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

突然夫が変わった!

こんにちは。

パモン堂です。

 

今、つらつらと昔の事を思い返しては、どうだったのか?と

検証作業をしているのですが、

今、過去ブログをアップしているのは、あれは、二度目のうつ病発症時の事なのです。

 

一番最初は、かなり以前。

まだ子供が小さい時でした。

 

それはもう二十年以上も前の事なので、

私の記憶とて定かではないのですが、

幸いなことに、私は物書きで、

当時の事を小説に書き起こしていました。

 

小説なので、登場人物もぼかして書いてはありますが、

かなり詳細に書き綴っていると思います。

 

というもの、その頃から、私は、これは書いておかなければ

大変なことになる、という気持ちがどこかしていたのです。

なので、この経験は貴重だろうと思い、残していたのだと思います。

 

また、強烈な体験ほど、人は書き残しておきたくなるものですからね。

そういうこともあり、私たちがその頃、どんな風に過ごしていたかということを

当時書いた原稿をそのままアップしておきますね。

 

少しでも伝わるように。

 

 

※リョーヘイ というのが、元夫のことで、

ナナコ が私です。

ツトム が息子になります。

  

 

翌日、仕事の帰りに病院へ寄ると言っていたリョーヘイが「ただいま」と言いながら、玄関に入ってきた。

夕飯の支度を終え、居間でテレビを見ていたナナコは、「お帰り、どうだった?」と飛んできて、リョーヘイに尋ねた。

「うん、なんか薬もらった」と疲れた顔でリョーヘイは答えた。

「薬? 薬で治るの?」

ナナコは、俄かには信じられなかった。

 

リョーヘイが不眠症に罹ってからもう随分経つ。そんな筋金入りの不眠症が、果たして薬などで治るものだろうか……? 

もっと深刻な診断をされると思っていたナナコは拍子抜けしてしまった。

 

そんなナナコの不信気な声にリョーヘイは、困った顔で、

「それが今は治るらしいよ。抗うつ剤って奴を貰った」と言った。

「えっ!? うつ病なの?」

ナナコは驚いて再び大声を出した。

夫の病は、不眠症からくるアルコールの問題だとばかり思っていたからだ。

リョーヘイもナナコの大声に、動揺したらしく目をキョトキョト動かしながら、

「そうなんだって。どうやら俺は、うつ病らしいよ」

と不安気に言った。

うつ病か……。

もちろん耳にしたことはあるが、具体的にはそれがどんな病気なのか、ナナコには皆目分からなかった。ただイメージだけがあるだけで。

 

それは、ひたすら暗くなる病、というものだった。

「……」

しかし目の前のリョーヘイは、普通に話しもすれば、時には冗談さえ言う。暗くって仕方がない、ということはない。ただ、お酒さえ飲まなければいいのだ。お酒さえ飲まなければ……。

 

ナナコは、これをどう受け止めていいのか分からなくて、黙り込んでしまった。
そんなナナコを励ますように、リョーヘイが妙に明るい声で言った。

「ま、お医者さんにも行ったことだし、薬を飲めば大丈夫だよ」

「……」

「これでしばらく様子をみよう」

仕方なくナナコは頷いた。

「そうだね」

 

そうして二人は重苦しい空気を打ち破るかのように、急にきびきびと食卓を片付け、夕食の皿を並べ始めるのだった。

 

その日の夕食時には、リョーヘイは晩酌を止めて、寝る前に薬を飲んだ。酒を飲まないリョーヘイはいつになく陽気でツトムに話し掛けていた。

 

そんな夫の様子を見て、ナナコはホッとしていた。

これで良かったのかもしれない、思い切って、お医者さんを勧めて。これでもしかすると、アルコールと切れてくれるかもしれない、そんな希望さえ持ち始めた。そしてもっと早くに勧めていれば良かったのにと思った。

 

しかし、調子が良かったのはそれまでで、それから二、三日すると、リョーヘイは再び酒を飲むようになってしまった。

いくらナナコが「薬とお酒は併用できないんでしょ?」と言っても、「いいから、いいから」と意に介さずに、最初は、缶ビールの小一本から、やがては、普段と変わりなく焼酎やウィスキーへと移行し始めたのだった。

それでも寝る前にはさすがに反省したのか、流しの前で赤い顔をしながら律儀に薬を飲む姿だけは見かけられたのだが……。

 

そんなリョーヘイに異変が起きたのは、それからしばらくしてからだった。

 

 

☆それでは今日もよい一日を。

 

 

嫁の家出 (実業之日本社文庫)

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