トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

突然夫が変わった 4

こんにちは。

パモン堂です。

 

前回の続きです。

 

両親が真夜中に、プロレスのように、

くんずほぐれつしているのを見て、

子どもが健やかに育つ訳はありません。

 

徐々に息子の体調もおかしくなってしまいました。

 

 

そんな生活が続いていくうちに、野沢家では誰もが、段々と朝が起きられなくなってきた。

 

リョーヘイが起きられないのは当たり前だが、ナナコも目が覚めると、朝七時半を過ぎているということがよくあった。

 

子どもたちは登校班を作って、一列に並んで学校へ行く。

その集合時間が、七時四十五分で、ナナコは慌てて傍らのツトムを起こし、無理矢理ランドセルを背負わせて送り出すのだった。

 

寝ぼけ眼のツトムが恨めしそうな顔で、ナナコの方を振り返り振り返り歩いていくのを、心の中で申し訳なく思いながら見送った。

 

無理もない。

毎晩、夜になると、父親が大声を出しては暴れるのだから……。寝不足もいいとこだ。

徐々にツトムは学校へ行くのを渋るようになってきた。

 

朝になると「お腹が痛い」などと訴える。

だが、ナナコはツトムを休ませることはしなかった。

 

ツトムを休ませると、だらしなく寝入っているリョーヘイの姿を目に焼き付けさせることになるし、それでなくとも、カーテンも開けずに暗い部屋の中で、生きているのか死んでいるのかも分からないような状態の父親と、二人っきりにさせることは、どうしてもできない事だった。

 

ツトムを送り出すと、ナナコはその場にへたり込む。

ナナコ自身、慢性的な寝不足だった。

 

私だって、休みたいのよ―、とナナコは思った。

 

だが、ナナコもまた休めなかった。

 

何故なら、休むと嫌でもこの重たい空気の中で、リョーヘイと二人っきりで取り残されるからだ。

まるでこの家の主(ぬし)のような、置物のような、大きな物体と二人取り残され、その存在をいつも感じていなければならないのは、嫌だった。

 

だから、ナナコは、「エイヤ!」と自分に気合いを入れて、仕事に出掛けた。この時ほど、仕事と言うものを有り難く思ったことはなかった。

 

 

 

「にゃん太を探して」より

 

 

 

結局、息子は小学校の間は、この「お腹が痛い」を繰り返し、

休みがちに・・・。

中学に入ると、二年生のころから、不登校になり、

卒業式は、校長室に呼ばれ、校長室卒業式を味わいました。

 

私たちの生活は、たった一人の〝モンスター〟によって破壊されたのです。

 

高校はなんとか出席日数ギリギリで卒業し、

三年浪人したのち、やっと、滑り止めで入った大学へ入学。

大学も出席日数ギリギリで卒業。

その間、一年休学と・・・

 

母親としては、もう、考えると頭が痛くなるような歳月でした。

 

それもこれも、あの時の経験が尾を引いてることは確かな事です。

 

息子には申し訳なかったとは思うのですが、あの当時の私は、

どうすることもできなかった・・・。

ただただ、目の前に起きることに対処するので精一杯で・・・。

 

なので、私は、〝薬〟に対するアレルギーがあるのです。

〝薬〟は、使い方を間違えると大変なことになる、

だから、安易に手を出してはいけないと考えています。

 

あの時、単なるアルコールの問題が、抗うつ剤を処方されることで、

大問題になってしまった。

それもこれも、ひとえに、精神の病に果たして〝薬〟は必要だったのか?

もっとほかのやり方はなかったのか・・・?

 

とは、今でも疑問に思う事です。

 

しかし・・・

 

実は、そんな〝薬〟嫌いの私の息子が選んだ大学は、

薬学部(本当は医学部を目指していたけれど、成績が足りず、

行けませんでした)。

 

 

皮肉なもんですね。

 

息子は、何かあるとすぐに〝薬〟を頼ります。

 

薬大好き。

痛みや苦しみを我慢するほど、馬鹿らしいことはないと言います。

 

私は祖母からも、「絶対に薬に頼る生活をしちゃならん!薬は最後に頼るもの」ときつく言われて育てられたので、なるだけ薬を使わないように生きてきたというのに・・・。

 

その私の息子が、薬学かよ・・・とは、最初聞いた時は、脱力したものです。

 

確かに、この教えを守って、ぜんそくの息子にも薬を使わせなかったことが、

彼の反発になったようです。

ぜんそくで苦しい虫の息から救ってくれたのが、〝薬〟だったからです。

 

そんな息子は、この春から病院へ勤務します。

今夜は、彼のための就職祝い。

三人で食事をする予定です。

 

いろいろあった子育て期間。

でも、これでようやく、私の長い、長い、子育ても終わりになったようです。

 

 

つづく

 

 

 

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