トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「ニャン太を探して」3

 

 ニャン太は自宅近くの児童館の前に、何匹かの子猫と一緒に、段ボール箱に入れられて捨てられていたネコだった。

 その中で、最後まで貰い手が付かなかったのがニャン太だった。

 それはニャン太が、兄弟猫の中でも、とりわけ不細工だったからだろう、とナナコは後からそう推測した。

 

 子どもたちの手で描かれた“ネコを貰ってください”の画用紙の張り紙が電柱に貼られ、それが仕事の行き帰りにナナコの目につくようになったのはいつの頃からか……。

 

 やがてその画用紙は雨風に曝され、徐々に色が褪めていったが、一向に外される気配はなかった。

 

 ネコを飼おうか?

 

 毎日そのポスターを見ているうちに、ナナコの中で段々とそんな思いが膨らんでいった。
 

 ナナコには、幼い頃に拾って来たネコを二匹飼っていた記憶がある。

 飼っていたとは言っても、実際に世話をしたのは母で、ナナコは、ネコたちと遊ぶだけだったが。一匹は黒い子猫で、捨てられていたのをナナコが欲しがり、どうしてもと駄々をこね、家へ連れ帰ったもので、もう一匹は、母が知り合いから頼まれて貰ってきた成猫だった。

 

 そのネコたちは仲が悪く、顔を合わすとフーフーと毛を逆立てて威嚇し、喧嘩ばかりしていた。そして、朝になると、布団におしっこをするので、その度に半狂乱になった毋に箒で追いかけ回されていた。

 

 やがてナナコ達は引っ越しをすることになり、ネコたちも山へ返す事になった。

 

 返すと言うのは言い得て妙で、要は捨てるということなのだが……。

 

 若い父と母は、せっかく建てたピカピカの新居に、ネコたちを連れて行こうなどとは、露ほども思わなかったのだ。

 

 新居へと向かう車の中から、ナナコはネコたちを山へ放った。寂しかったけれど、子どもの身ではどうすることも出来なかった。それ以来犬は飼ったが、ネコを飼ったことはなかった。

 

 息子のツトムは、喘息持ちで、季節の変り目や、明け方などによく発作を起こした。

 体だけは丈夫だったナナコには、自分の子どもが喘息持ちであるということが、長い間受け入れられなかった。

 薬を飲み続けるだけでなく、なにかこの病気に抵抗できるものはないかと考えていたが、スイミングをさせても長続きせず、結局ずるずると薬に頼るしか対処法がないのだった。

 当然、発作の起きる原因ともなる毛のあるペットなどは御法度だったが、自身も幼少の頃、ネコを飼う喜びを知っていたナナコは、発作よりも、ツトムの情操教育の方が大切ではないかと考えていた。 

 

 それにいつも自分の仕事のために、ツトムを一人っきりにさせることにナナコは、強い罪悪感を覚えていた。だから、せめてネコを飼い与えることによって、ツトムの寂しさが少しでも紛れたら……そうすれば喘息も治まるのではないか? などと、そんな風に都合よくも考えていたのだった。

 

 

つづく

 

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