トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「ニャン太を探して」19

 会社にいる頃にも、しょっちゅう遅刻してくるリョーヘイの事を、ナナコは気になっていた。

 

「いやあ〜夕べ飲み過ぎちゃってさぁ」と入ってくるなりそう言って頭を掻くリョーヘイに、周りの同僚達は、「またあ」と言いながら、苦笑いをするだけで、別段咎める訳でもなかった。

 

 第一、仕事の勤務時間自体が不規則なので、そんな事を気に留める者など誰もいなかったのだ。ナナコはむしろ皆から愛されているリョーヘイに好感を持っていたぐらいだった。
 

 ところが、それがリョーヘイにとって、深刻な悩みのタネだと知ったのは、結婚してしばらく経ってからのことだった。
 

 

 夜中に、ふと台所の明かりが漏れているのに気がついたナナコが、起き上がって見てみると、リョーヘイが一人、流しの中に浸けてあった茶碗をガチャがチャと大きな音を立てて洗っているところだった。

 

「……」

 

 それは、明日の朝にやろうと思って、浸けておいたものだったのだが―。慌てたナナコは、

「ごめん、それ、明日やろうと思って浸けておいたんだよね」と後ろから声を掛けた。

 

 しかし、リョーヘイには聞こえなかったのか、水道の音だけが、ジャージャーと大きく響いた。

 

「……」

 

 不審に思ったナナコが、ふと台所のテーブルを見ると、そこにはビール瓶が4、5本並んでいた。中には倒れているものもあった。夕食時にビールを飲んでいたリョーヘイが、そのまま飲み続けたものに違いなかった。

 

 夫はどうやら酔っぱらっているようだった。
 

 ぴたりと水の音が止んだかと思うと、リョーヘイがこちらを振り向いた。ナナコはドキリとしたが、リョーヘイの視点は合ってはいなかった。

 

 そして今度は一言、「だらしない」とため息をつくと、ビール瓶を片付け始めたのだ。

 

「……」

 

 ナナコにはそれがなんだか自分への当てつけのように感じて不愉快になった。そこで、またソーッとドアを閉めると、布団の中へと潜っていった。

 

 ドアの向こう側では、ガチャガチャと瓶のぶつかり合う音がいつまでもしていた。

 

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つづく