トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「ニャン太を探して」54

ナナコは恐怖でしばらく動悸が止まらなかった。

頭の中が真っ白になっていた。

 

対向車とはどちらかがバックしなければ通れない幅だった。

リョーヘイはビービークラクションを鳴らして相手を威嚇し始めた。

“お前がどけ”ということだ。

 

対向車はノロノロとバックし始めたが、なにせ道が曲がりくねっているために、上手くバック出来ない。

 

リョーヘイはイライラしながら、ビービー鳴らしていたが、やがて痺れを切らしたのか、「チッ!」と舌打ちすると、今度は自分の車をバックさせた。

 

少し窪んでいる箇所で待機していると、対向車が慎重にやってきた。

 

二台はギリギリのところですれ違った。ナナコが運転席の方を見ると、三十代くらいの女性が真剣な眼差しで前を見詰めていた。

 

ようやく車が抜けると、相手はそのまま行こうとした。

リョーヘイは突如、「待てッ!」と怒鳴るやいなや車から飛び出した。

 

「もういいじゃないの!」とナナコが声を掛けたが間に合わなかった。

 

「待てよ、オイッ! ぶつかりそうになったのに、挨拶なしかよッ」

 

道の真ん中で仁王立ちになったリョーヘイは、車に向かってそう怒鳴った。

 

相手の女性も車から出てきて、「すみません」と頭を下げた。

そして、「でも、お宅もすごいスピードでしたよ」と言った。

 

だがその一言がリョーヘイの怒りに更に火を付けた。

「なんだと! ぶつかりそうになったくせに、そんなことを言うのかッ。ふざけんなよ、テメェーッ!」

 

女性は頭を下げた。

 

「だから、すみませんと謝ったじゃないですか」

「謝ればいいのかよ、謝れば、え! 謝れば全て許されるのかよ」

 

女性はうんざりしたように天を見上げて、それから腕時計をチラと見た。

 

「すみません、私、これから仕事なんです。遅れそうなんです。あとでいくらでも謝りますから、今日のところは……」

 

「そんなの俺になんの関係があるんだよッ。え? そっちの都合だろ?」

 

女性はため息をつくと、今度はキッとリョーヘイを睨んだ。

 

「じゃあ、どうすればいいんですか? どうすれば許してもらえるんですかッ? 今ここで、土下座でもすればいいんですか?」

 

そう開き直られると、グウの音も出ないリョーヘイだった。

彼は明らかに、難癖を付けたあとのことを考えてはいなかった。ただただ、腹立たしかっただけなのだ。

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つづく