トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「ニャン太を探して」79

リョーヘイの言葉にナナコは少なからずショックを受けていた。リョーヘイがそんな風に思っていたなんて、知らなかった。ただ酒を飲んで暴れているだけだと思っていたのに……。ダメな奴だとばかり思っていたのに……。

 

「俺を殺してくれ、それでひと思いに……。なぁ……」

 

玄関の中からそう聞こえてくるリョーヘイの切ない声が、ナナコの胸に突き刺さった。
そうか、そんなに苦しかったのか……。

 

ナナコは思わず涙ぐむ。

ごめんね、分かってあげられなくて。……

 

「ご主人、死ぬなんて言っちゃあいけませんよ。ほら、奥さんだって、困っているでしょう。奥さんの為にも生きなきゃ」

 

警官はそう言って、ナナコの方を指差した。けれど、リョーヘイはナナコの方など目もくれずひたすら警官に取り縋っていた。

 

「なぁ、俺を殺してくれ、頼む。みんなが俺をバカにするんだ。俺のことをみんなでバカに……」そう言って、泣きはじめた。

 

「なんて言ってバカにするんですか?」警官はあくまで同情的だった。

 

「俺のこと、家も買えない貧乏人だって言うんだよ。二階の奴がうるさいんだ。だから俺は眠れないのに……。引越したいのに……なのに、俺みたいな安月給じゃあ、家なんか買えないって言うんだよ」

 

そう言ってリョーヘイは男泣きした。

 

「えっ!?」とナナコは唖然とした。開いた口が塞がらなかった。

 

リョーヘイはナナコがいくら持ち家を買いたいと持ちかけても、「そんなの無理だ」の一点張りで、どんなに誘っても物件の一つすら見に行ったことがなかったのだ。

だから、てっきり家など興味がないものだと思っていたのだ。

 

それなのに、なんだよ、お前、言ってることとやってることがあまりにも違うじゃないか―!?

 

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つづく