トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「ニャン太を探して」98

「ねぇ、ねぇ……ったら」

 

ある夜、ナナコは寝ているリョーヘイに囁いた。ナナコたちが寝室にしている部屋の一番入り口付近にいつもリョーヘイは布団を敷いて寝ていた。間にツトムを挟んで、ナナコは一番奥の窓際に寝ていた。三人分の布団を敷くと、部屋全体がもうそれだけで一杯だった。

 

「……」

 

リョーヘイは返事をしなかった。

 

ナナコはもう一度囁いた。「ねぇ……」だがやはり反応は返ってこなかった。仕方なくナナコは、寝ているツトムを跨いでリョーヘイの布団に滑り込んだ。そしてその大きな身体に自分の身体を巻きつけた。

 

それでもリョーヘイは身じろぎ一つしない。困ったナナコは、その耳をぺロリと舐めた。だがやはり反応はなかった。

 

「……」

 

ますます困ってしまったナナコは、仕方なく行為をエスカレートさせていった。ナナコはリョーヘイの身体をまさぐりはじめた。優しく、強く、甘えるように。その指が段々と下の方へ降りていくと、

 

「……めろ」

 

突然、低い声が暗闇に響いた。

 

「え?」ナナコは思わず聞き返した。

 

「やめろ、気持ち悪い」

 

今度は聴き違いなどではなかった。リョーヘイはナナコに向かって、はっきりそう言ったのだ。しかも、目も開けず、顔一つ動かさずに。

 

「―!」

 

ナナコはその場に凍り付いてしまった。気持ち悪い……? 本気なの……? もちろんリョーヘイにそんな事を言われたのは初めてだった。それでもまだ、ナナコはリョーヘイの真意を量りかねていた。ナナコが動揺していると、リョーヘイは尚も続けた。

 

「俺に触るなッ、気持ち悪い」

 

今度はナナコにも分かった。リョーヘイは本気なのだ、本気でナナコを嫌っているのだ。ナナコにはその言葉が痛いほど突き刺さった。

 

「……」

 

唇をかみ締めて、ナナコは自分の布団に戻った。そうして、リョーヘイに背を向けて眠った。もう二度とお前なんか触るもんかと誓いながら。そうして、まさかそれが本当にそうなるとは、その時のナナコには思いも寄らないことだった。

 

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つづく