トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「ニャン太を探して」105

昼過ぎに目覚めると、玄関にニャン太の鳴く声がした。

久しぶりにニャン太が帰ってきていた。

 

ニャン太はすっかり野良らしく、乾燥したキャットフードを食べなくなっていた。

ナナコは奮発してシーチキンの缶を開けてニャン太へ与えた。

食べ終わると、ニャン太は居間へ来て、ナナコの膝の上で甘えた。

ナナコはニャン太を撫でてやりながら、複雑な思いがした。

 

ニャン太、お前は幸せかい? あの時お前を引き取ったのは正解だったのかい? お前、他所へ貰われていた方が幸せじゃあなかったのかい? 

 

ひと撫でするたびに、手の平の湿疹が痛くなるようで、ナナコの手につい力が入ってしまった。ニャン太の顔がくしゃくしゃになった。

 

「痛ッ!」

 

ナナコは思わず声を上げた。ナナコの手にニャン太が噛み付いたのだ。それは穴が開くかと思うほど強かった。

 

ナナコは思わずカッとなった。そして、初めてニャン太に憎悪を感じた。

 

「このバカ猫、痛いじゃないか!」

 

ナナコはニャン太の頭をバシンと叩いた。

 

「痛いッ、痛いッ、このバカ猫、お前なんか嫌いだ、このバカ、出て行けッ、あっちへ行けッ!」

 

叩いているうちに興奮してきて、段々力が強くなった。

ニャン太は目を細め身をかがめながら玄関へと走って逃げた。

そしてナナコの方へ振り向くと、一声「ニャー」と鳴いた。

 

だが、ナナコの怒りはまだ収まらなかった。玄関のドアを開けて外へ出してやった。このままだと何をするか分からなかった。

 

ニャン太は後ろを振り向かず走り去ってしまった。

 

そして、これがニャン太との別れだった。

 

それっきりニャン太が帰ってくることはなかったのだ。

 

 

ニャン太が居なくなり、ツトムは寂しがったが、ナナコはホッとしていた。

 

これで無用な争いがなくなる、ようやく平安が訪れる……心のどこかでそんなことを思っていたのだった。

 

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つづく