トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「タイム・トラブル?」4

その日、俺たちはいつものように中庭へ来ていた。

 

木陰で、車椅子を停めて休んでいると、近くで鳥がバタバタと羽音を立てながら飛んでいくのが見えた。

 

しばらくその様子を見ていた田中さんだったが、突然その両目から涙がこぼれた。俺は驚いて尋ねた。

 

「田中さん、どうしたんですか、何かあったんですか?」

「美代子が死んだ……」

「え? 誰が死んだって?」

「美代子だよ、俺の女房だよ」

「……」

 

田中さんの奥さんはだいぶ前に亡くなっている筈だった。

記憶が甦ってきたのだろうか?

 

「あいつには苦労を掛けた。これからだって時に」

「そうだったんですか」

「この金であいつに世界一周の旅でもさせてやりたかったのに」

 

 

後は、ううう……とむせび泣く田中さんに、俺は呆れた。

 

こんな時にまで、ない金のことを話しているよ、と。

 

 

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つづく