トナリのサイコパス

どこにでもいるヤバイ奴。そうあなたの隣にも―。さて、今宵あなたの下へ訪れるサイコパスは―?

「タイム・トラブル?」6

それからしばらく田中さんとは顔を合わせなかった。

別の系列の施設へと研修に行かされていたのだった。

 

ようやく田中さんとまた散歩に出られるようになったのは、年末も押し迫った、ある寒い日の事だった。

 

その日は朝からちらちらと粉雪が舞っていたが、お昼頃になると青空も見え始めた。俺は思い切って田中さんを散歩に連れ出した。

 

しばらく見ないうちに田中さんは、一回り小さくなり固まったような気がしていた。

 

ゆっくりと車椅子を押していると、駐車場の向こうから、バイクのブォォォォーンという爆裂音が聞こえてきた。

 

その音を聞くと、田中さんは震える両手を握りしめ、何かをつぶやいたようだった。俺は耳を近づけて聞いてみた。

 

「ぶぉん、ぶぉん」

 

「……」

 

どうやら田中さんはバイクに乗っているらしかった。

そう言えば田中さんは自動車整備工場をやっていたのだ。

 

「田中さん、バイクお好きなんですか?」

 

そう俺が聞くと、田中さんの顔にみるみるうちに赤みが差してきて、

 

「あん? バイクだと? 単車と言え、単車と!」

 

と怒鳴った。俺は言い直した。

 

「単車お好きなんですか?」

 

そう言えば、ウチの親父もバイクの事を単車と言っていたっけ。俺はそんな事を思い出していた。

 

 

 

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つづく