「好きだね。単車はやっぱりカッコいいよ」
その調子が妙に優しかったので、俺は笑った。
「そうですか。どんな単車が好きなんですか?」
「どんなって……やっぱり男は白バイだろう?」
「白バイ?」
「ああ、俺は白バイを作ったこともあるんだぜ」
得意そうに言う田中さんに俺は面喰らった。
「作ったって……?」
「ああ、あれは大変だった。一ヶ月近く掛かったかな、作るのに。でも大成功だった。誰も偽物だって気づかなかったよ」
「――!?」
「あの間抜けな銀行員ども、俺が本物の白バイ警官だって、最後まで思っていたようで、ずっと地べたに伏せたままだったなあ」
そう言うと、田中さんは可笑しそうにクククッと笑った。
「こっちは発煙筒焚いただけなのによぉ。バカな奴らだぜ」
「――!!」
いつの間にかアハハと田中さんは大声で笑っていた。
つづく