俺の顔はおそらく青くなっていたに違いない。
頭の中には、最近見たテレビ番組がぐるぐる回っていた。
それは、今から四十四年前に起きた三億円事件を取材したものだった。
白バイ警官に扮した男が、まんまと大手電機メーカーのボーナス約三億円を、府中刑務所裏の通りで強奪した事件だ。
ま、まさか……田中さんがその犯人……?
俺は震える声で平然を装って聞いてみた。
「田中さん、今おいくつですか?」
「俺か? 俺は今、43歳。やっていた工場が借金の形に取られちまってよぉー。この寒空、行くところもねぇんだ」
「そうですか……。ところで、今日は、何日ですか?」
「今日? お前、今日と言ったら、1968年12月10日じゃねぇかよッ!」
田中さんは憮然とした表情で言った。
つづく